2024.01.08 01:40「マイケル・チャンの受難」:/ 00映画の劇中劇「ソレスタルビーイング」ネタ / 刹那とライルも少し「伏せろ!」 ひゅっ、と。 頭のすぐ横を、風を割く音ともに、何かが通り抜けていく。 一瞬の後。すさまじい爆音と爆風がもろに体にぶつかってきて、俺は叫び声をあげた。「ひ、ひぃいい!た、助けて!」「こっちだ!」 今しがた小型爆弾を投げた張本人が、そう叫んで俺の手を掴む。撮影スタジオの入り組んだ廊下を、男は俺の手を引きながら迷うことなく走り抜ける。 ほんの数分前。 この男は何の前触れもなく俺の楽屋控え室...
2024.01.08 01:38「ミスター・エーカーの閑雅なる朝食」: グラハムと刹那とライル / しょうもない朝食話 朝、シャワーを浴びているその時に、もしも少年が自分を訪ねてきたらと考えることがある。 そうしたら自分はこうすると思う。トーストととっておきのベーコンを焼いて、熱いコーヒーを淹れる。なんなら卵だってつけていい。スクランブルでもフライド・エッグでも。こんなもてなししか出来ないことを口では詫びながら、彼をテーブルにつかせる。自分が作った朝食を食べさせて、それを眺めながら、満足げに自分もコーヒーを飲む。...
2024.01.08 01:37「ローライコード」: / 本編沿い / 池田特派員→刹那 その音は、ともすれば銃声のように彼に聞こえたのかもしれない。「…悪いが」 地の底から響くようなその声に、全身が総毛立つような感覚を覚えなかったといえば嘘になる。「すぐにメモリーを削除してくれ」 その黒髪の、明らかに中東系の顔立ちをした若者は、俺の構える一眼レフに向かってそう言った。「…そうだよなあ。そうなるよなあ」 俺はファインダーを覗き込んでいた瞳を彼に向けて、ぽりぽりと頭をかく。「悪かったよ...
2024.01.08 01:36「大人の男」:/ 本編沿い / 刹那×スメラギ 彼とその姿との間には、本当はマリアナ海溝のような深い溝があった。たった数秒前までは。「…あら」 我ながら中途半端な声色だったと思う。もっと大袈裟に笑ってやればよかったのに。「どうした」「刹那、」 青年の声に反応して、スメラギは右手で自身の顎の辺りに触れるような仕草をした。格納庫で愛機の整備に出ずっぱりだった刹那・F・セイエイは、それを見て自らの顔に手を伸ばす。顎に触る、というよりかは、掴む、とい...
2024.01.08 01:29「青の情熱」:/ 軌道エレベーターの客室乗務員モブお姉さんの話 / 刹那とライルも少しだけ きみが大変だってことは分かる、とクヌートは言った。 仕事に忙しくしているのは知っているし、ぎりぎりのところで頑張っているんだろうとも思う。その仕事だって大したもんだ。軌道エレベーターの客室乗務員なんて狭き門だからね。タフじゃなきゃ続けられない。尊敬するよ。 じゃあ何が気に入らないって言うのよ。と彼女は聞く。 実は今日、口述試験に受かったんだ。彼が言う。 あとは論文だけだ。うまくいけばこのままフラ...
2024.01.07 10:02「Fix us./甘い薬」:/ 本編沿い / アニュー死直後 / 添い寝でお互いを癒す二人Fix us.「俺は平気だ」 そう言って湿布を拒もうとする手を、フェルトは掴んだ。「顔が腫れたら、ヘルメット被れなくなるよ」「……」「座って、刹那」 非常用電源の青白い灯りが照らす自室で、フェルトはぴしゃりと刹那にそう命じた。 わずかに躊躇うような仕草を見せた刹那が、おとなしくフェルトが腰掛けているベッドの傍らに座る。 自前の救急キットから新しい湿布を取り出し、彼の頬にあてがう。そのままではサイズ...
2024.01.05 11:58「イノベイターかく語りき」:/ 本編沿い / 2期最終回後 / モブ視点の刹那「そろそろコーヒーでも淹れよう」 同僚の声にはっと顔を上げると、壁にかかった時計と目が合う。 最後に時間を確かめた時、短針はどこにあった?「やりすぎだよ、お前」「ああ……」 右手を上に伸ばし、思わず前髪をかきあげる。髪はベタついていて、喉は痛いほどに乾いていた。デスクの端に置かれたマグカップに手を伸ばす。紅茶のティーバッグが不精にもそのままだ。 濃くて冷たい紅茶を二口で飲み干すと、顔を上げて窓の外...
2024.01.05 11:52「MELLOW JEALOUSY.」:/ 本編沿い/付き合い始めたばかりの刹フェルと、フェルトに恋をしているモブ きみは覚えているか? 自分が恋に落ちていることに気付いた瞬間のことを? ……覚えてないよ。一〇代のガキの頃だったら、別かもしれないけどな。 そうか。ぼくははっきり覚えてる。彼女に恋をしたあの日のことを。 それは結構。……もう今日はやめとけよ。酒、そんなに強くないんだろ。 明日が何の日だか分かって言ってるのか? 知ってるよ。 トレミーが着艦する日だ。彼女がここに来るんだぞ? 興奮して眠れたものか。...
2024.01.05 11:48「恋の道行き」:/ 本編沿い / 2期最終回後のフェルトの日記 / ライルも少し12月13日 いつかあなたが目を覚ました日に、いま起きている出来事をうまく説明できないと困るので、今日から日記をつけることにしました。日記と言っても、ゆっくりつけている余裕はとてもじゃないけどないので、自分が忘れないようにするための、メモ書きです。 今日、ラッセさんがティエリアをトレミーに連れて帰ってきてくれました。どうやら連邦軍の先遣隊がまもなくあの宇宙母艦の調査にやってくるようです。私たちもこ...