2024.02.16 12:48「バレンタインの天使たち」: / 本編沿い / クリスとニールに見守られてるふたり ふと、甘いチョコレートの香りに視線を奪われる。 コロニー内の商業施設。ひときわ人が多い食料フロアーの一画に、その店はあった。「バレンタインのチョコレート催事です」 よかったらどうぞと差し出されたのは、小さなカップに入ったホットチョコレート。ひとりで買い出しに来ていたフェルトは少しだけ悩む。今日ここに来たのはトレミーの食料調達のためで、半分非番で半分任務のようなものだ。こんなところで横道に逸れるわ...
2024.01.07 10:02「Fix us./甘い薬」:/ 本編沿い / アニュー死直後 / 添い寝でお互いを癒す二人Fix us.「俺は平気だ」 そう言って湿布を拒もうとする手を、フェルトは掴んだ。「顔が腫れたら、ヘルメット被れなくなるよ」「……」「座って、刹那」 非常用電源の青白い灯りが照らす自室で、フェルトはぴしゃりと刹那にそう命じた。 わずかに躊躇うような仕草を見せた刹那が、おとなしくフェルトが腰掛けているベッドの傍らに座る。 自前の救急キットから新しい湿布を取り出し、彼の頬にあてがう。そのままではサイズ...
2024.01.05 11:58「イノベイターかく語りき」:/ 本編沿い / 2期最終回後 / モブ視点の刹那「そろそろコーヒーでも淹れよう」 同僚の声にはっと顔を上げると、壁にかかった時計と目が合う。 最後に時間を確かめた時、短針はどこにあった?「やりすぎだよ、お前」「ああ……」 右手を上に伸ばし、思わず前髪をかきあげる。髪はベタついていて、喉は痛いほどに乾いていた。デスクの端に置かれたマグカップに手を伸ばす。紅茶のティーバッグが不精にもそのままだ。 濃くて冷たい紅茶を二口で飲み干すと、顔を上げて窓の外...
2024.01.05 11:52「MELLOW JEALOUSY.」:/ 本編沿い/付き合い始めたばかりの刹フェルと、フェルトに恋をしているモブ きみは覚えているか? 自分が恋に落ちていることに気付いた瞬間のことを? ……覚えてないよ。一〇代のガキの頃だったら、別かもしれないけどな。 そうか。ぼくははっきり覚えてる。彼女に恋をしたあの日のことを。 それは結構。……もう今日はやめとけよ。酒、そんなに強くないんだろ。 明日が何の日だか分かって言ってるのか? 知ってるよ。 トレミーが着艦する日だ。彼女がここに来るんだぞ? 興奮して眠れたものか。...
2024.01.05 11:48「恋の道行き」:/ 本編沿い / 2期最終回後のフェルトの日記 / ライルも少し12月13日 いつかあなたが目を覚ました日に、いま起きている出来事をうまく説明できないと困るので、今日から日記をつけることにしました。日記と言っても、ゆっくりつけている余裕はとてもじゃないけどないので、自分が忘れないようにするための、メモ書きです。 今日、ラッセさんがティエリアをトレミーに連れて帰ってきてくれました。どうやら連邦軍の先遣隊がまもなくあの宇宙母艦の調査にやってくるようです。私たちもこ...
2020.08.30 12:32「ある降伏の記録」:本編沿い / モブ視点刹フェル / 性に奔放な刹那さん 根源的な部分で好きになれない人間というものがやはり世の中には存在していて、俺にとってはそれは、刹那・F・セイエイという男だった。 このことを他の人間に吐露したことはほとんどない。人の悪口を簡単に吹聴すべきものではないというのももちろんだが、悲しいことにたいていの人間は俺のこの意見に同調してくれない。程度の差はあれ、この組織に属するほとんどの人間は、あの寡黙な男のことを、お...
2020.08.30 12:19「ポーカー・フェイス」:2期 / 刹那とライルがポーカーしてる / 刹→フェル気味「ストレート」 「………」 「フルハウス」「………」「…ロイヤルストレートフラ」「だああああ!」 テーブルの上に思う存分五枚の手札をぶちまけ終わると、俺はその上へと突っ伏した。 俺の前に座る鉄仮面のようなポーカー・フェイスが、なんの感慨も思いやりもなく、口を開く。 「なんだ」 「なんだじゃねえよ!」 俺は勢いよく顔を上げて...
2019.10.24 15:00「クリームソーダの国」:現パロ大学生 / 刹フェルと沙慈 / 小さな幸福のかたちについて 僕が言うのもなんだが、僕の友人はたいそう変なやつだとおもう。まず食事の取り方がちょっと「普通」から逸脱している。こういうのを悪食と呼ぶのかどうか分からないけれど、日本人の僕には想像できないような取り合わせの食事を、平気でしていたりする。付き合いの長い僕はもう慣れてしまったけれど、それでもときどき、納豆ごはんと一緒に彼の好物である「メロンクリームソーダ」が付いてきたりすると、朝からうんざりすること...
2019.06.08 01:25「多層階思慕」:/ 現パロ / フェルトの誕生日記念小説 / 転生匂わせ 雪で電車が遅れてるみたい。 十分くらい遅れるかも。 画面の上に灯る既読の文字を認めると、彼女はスマートフォンをコートのポケットに滑り込ませた。両手を合わせ、冷えた手と手をこすり合わせると、環状線のホームから騒がしい師走の大通りを見下ろした。冬の始めに心を賑やかせた並木道のイルミネーションはもはや見慣れた情景で、この凍えるような寒さの気晴らしにはちっともなりそうにない。それに一刻も早く目的の場所に...
2019.05.05 15:00「わるいむし」:本編沿い2期後 / 組織のモブに言い寄られるフェルトと無自覚嫉妬の刹那さん 刹那の発言がいつも突拍子もないことは、全くもって周知の事実だと思う。ラグランジュポイント、ソレスタルビーイングの秘密ドッグに、俺たちトレミーのクルーが一時的に滞在していたときの出来事だ。 「虫が出たな」 届いたばかりのカタロン横流しフラッグを、これからどう料理していこうかっていう、そんな真面目な議論の真っ最中。 搭乗者である刹那・F・セイ...
2018.08.12 15:00「朝食はキャラメル・ラテと共に」:「カプチーノ・ラブ」の続き / フェルトが飼っている猫視点(ホント、どういうことなのよ) 私がそんな視線で見上げると、フェルトは両手を顔の前で合わせて、「ごめん、本当にごめんなさい、ミア」と何度も謝った。 (謝ってすむ問題じゃないのよ) にゃおんと不機嫌そうにひと鳴きすると、フェルトは悲しそうに眉尻を下げた。それを見て私は少し反省する。別にフェルトを困らせたい訳ではないのだ。スツールを頼りにひらりと大理石のキ...
2018.08.11 15:00「岸辺にて」:IF1期後パロ / 大人になった刹那とフェルト 彼女はいつもより長く湯に浸かり、そうしてバスタブから体を引き上げた。濡れた体をタオルで拭き、裸のままクローゼットへと歩いて行くと、どの服を着ようかと考えた。いくつかの服を取り出して、鏡の前で合わせた後、やや胸元の空いた、レモンイエローのワンピースにした。それを頭からかぶり、鏡に向かって姿を確認してみた。よく似合っているし、女らしく見えると思う。 化粧はもともとあまりしない方だったが、アイシャドウ...